インナーマッスル
インナーマッスルとはアウターマッスルに対して言われる主に体幹の固定を行う筋のことです。
腹部周囲のインナーマッスルとして腹横筋、多裂筋、横隔膜、骨盤底筋群があります。
これらは持続的な収縮を求められます。腰椎の周囲を取り囲むように存在し、風船のように腹圧をかけ、安定性を得ることができます。また、腹横筋は胸腰腱膜を引っ張ているため、胸腰背部の安定性にも寄与しています。
インナーマッスルが弱いとアウターマッスルである脊柱起立筋や関節に負担がかかり、腰痛を引き起こしてしまいます。そのため、インナーマッスルのトレーニングは腰痛予防に効果的です。
インナーマッスルのトレーニングとしてドローイン、ダイアゴナルがあります。
【ドローイン】
仰向けでおなかと背中をくっつけるようなイメージでお腹の周囲をしぼめていきます。最も基本的で、力が入っているかはお腹を横から触り、筋肉が硬くなっているか確認することで一人でも可能です。注意点として「息を止めお腹を膨らませない」ことです。患者さんにやっていただく中でよくみられるのが、腹圧を上げようと息を止め胸郭を膨らませることです。一見できてる風ですが、全然腹横筋の収縮は得られません。仰向けでできたら、座っているときや立っているとき、歩いているときにドローインを意識することで、日常でも効果的にトレーニングが可能です。
【ダイアゴナル】
四つ這いで左右対称の上肢・下肢を挙上することで多裂筋、腹横筋を鍛えることができます。注意点として、「腰をそらしすぎない、ドローインを意識する」ことがあります。腰をそらしすぎると、アウターマッスルである脊柱起立筋群の代償が入り、インナーマッスルのトレーニングの効率が落ちてしまいます。
腰痛(侵害受容性疼痛)
侵害受容性疼痛についてです。
日常で生じる筋性腰痛、ぎっくり腰(腰椎捻挫)、椎間関節由来、仙腸関節由来の痛みは侵害受容性疼痛に分類されます。
侵害受容性疼痛は熱刺激、機械刺激、化学刺激により、惹起される痛みです。
筋性疼痛は筋への微細な損傷(炎症反応)、血行不良による化学刺激により痛みを生じます。
ぎっくり腰、椎間関節、仙腸関節由来は靭帯、関節に過度の負荷がかかり損傷、炎症により痛みを生じます。
ここまでで、痛みの起こるメカニズムはざっくり説明しましたが、なぜこの現象が起こるかが大切です。
骨の特徴
脊椎は頚椎(7個)、胸椎(12個)、腰椎(5個)、仙骨、尾骨で構成されます。それぞれ可動性はあるものの肩や股関節などの大きな関節と比べるととても少ないです。特に胸椎は胸郭(肋骨、胸骨)があるため、ほとんど動きません。腰椎も曲げたり伸ばしたりする方向には若干動きますが、ねじったり、横に曲げる動きは少ないです。また、骨盤と脊椎の間の仙腸関節という関節も動きは少なく、関節の間は痛みを感じとる感覚受容器というセンサーが多いため、少しの機械的な刺激で痛みを感じてしまいます。
筋の特徴
腹部には腹直筋、内・外腹斜筋、脊柱起立筋群などのアウターマッスル、腹横筋、多裂筋、横隔膜、骨盤底筋群などのインナーマッスルがあります。アウターマッスルが体を動かす(求心性・遠心性収縮)、インナーマッスルが体を止める(等尺性収縮)を行います。筋肉はどこかが弱いとどこかが頑張る必要があります。
上記特徴を踏まえ、
【筋性疼痛】インナーマッスルが弱い、使われていない場合はアウターマッスルである脊柱起立筋に過度な負担がかかります。それゆえ筋の損傷、筋の過剰な収縮により血管が圧迫され血行障害をおこし、痛みを生じます。
【ぎっくり腰、椎間関節由来】腰椎の上下の関節の可動性の低下により腰椎の過可動性が求められ、椎間関節に圧迫、離開する機械的なストレスがかかり、疼痛を生じます。上下の関節とは全身はすべて連なっているため、どこから影響を受けているかは検討が必要です。わかりやすいものとして、股関節周囲の筋・靭帯の伸張性の低下(大腿四頭筋、大腿筋膜張筋、腸脛靭帯、ハムストリングス)は骨盤に影響を与え、間接的に腰椎に負担をかけることになります。